この記事はこんな人におすすめです
部下や後輩につい強い言い方をしてしまう
怒鳴るつもりはないのに気づくと声を荒らげている
自分も昔 怒鳴られて育った
「厳しく教えること」と「怒りで相手を動かすこと」の違いが分からない
相手にちゃんと伝えたいのに怒ってしまった後で後悔する
もし一つでも当てはまるならこの記事はあなたのための話です
最初に言っておきます
「厳しくするな」という話ではありません
仕事ですから言わなければいけないことはあります
間違いを指摘することもある
厳しく伝えなければいけない場面もある
ただし怒りを使わなくても人に伝える方法はあります
僕自身もこれを知らないまま、自分がされて嫌だったことを人にしていました
今日はその連鎖を止めるために、僕が学んだ4つの考え方を書きます
1.怒りを「勝手に出てくるもの」で終わらせない
2.評価するより感謝を伝える
3.相手の課題まで背負わない
4.「あなたは」ではなく「僕は」で話す
どれも難しいことではありません
僕自身の仕事や人との関わり方は、この4つを知ってから変わりました
怒鳴られて育った人が怒鳴る人になる
前回は「嫌な上司との付き合い方」について書きました
理不尽に怒る人とどう距離を取るか
今回はその裏返しの話です
あなた自身が誰かにとっての「その上司」になっていないでしょうか
僕は昔 接骨院で働いていました
修行中の身で丁稚奉公のようなもので毎日のように怒鳴られていました
まだ何の知識もない
いつも誰かの顔色をうかがっている
失敗するとまた怒られる
ずっと委縮していました
当時の僕はそれを「普通」だと思っていたんです
この世界はこうやって厳しく教わるものなんだ
自分も一人前になるためには耐えるしかない
そう思っていました
そして何年か経って僕は自分の院を持ちました
今度は人を雇う側です
そこで僕はあることをやらかしていました
自分がされて嫌だったことをそのまま弟子にしていたんです
同じような言い方で
同じような怒り方で
自分が「こんなふうにはなりたくない」と思っていた人に僕自身がなっていました
そしてその子はすぐに辞めました
あの時のことは今でも覚えています
怒鳴られて育った人が怒鳴る人になる
これは特別な人だけに起こることではないと思っています
だから僕はここで一度立ち止まって考えたいと思うんです
自分がされた嫌なことをなぜ人にもしているんだろう
ということについてです
1.怒りを「勝手に出てくるもの」で終わらせない
まずひとつ想像してみてください
あなたが誰かを大声で叱っている最中に電話が鳴ったとします
相手は取引先です
あなたはどうしますか
おそらく「はい、お世話になっております」といつもの落ち着いた声で電話に出ると思います
そして電話を切った瞬間「で、さっきの話だけど!」とまた怒った顔に戻る
不思議じゃないでしょうか
本当に怒りに我を忘れていたのなら電話に出ても怒鳴っているはずです
でも僕たちは声を変えられる
怒りをいったん横に置くこともできる
怒りは「勝手に出てきたもの」と考えるだけではなく
何かの目的のために使っているものとして見ることもできる
アドラー心理学ではこれを「目的論」という考え方で説明します
ここで大事なのは「怒るな」という話ではありません
怒りを使って相手を動かしていないか
そこを見ることです
怒りはその場ではよく効く
怒りは便利です
怖い顔をされれば人はその場では動きます
説明するより早い
話し合うより疲れない
だから一度それで相手が動くとまた使いたくなります
その時に手に入れているものをよく見てみる必要があります
あなたが手に入れたのは納得ではなく服従かもしれません
相手は「言っていることが正しいからやろう」と思ったのではなく
「怒られたくないからやろう」と思っただけかもしれない
この二つはまったく違います
そして後になって顕著に現れるはずです
怒られるのが怖い人はだんだん自分で考えなくなる
考えて動いて間違えたら怒られる
だったら「言われたことだけやろう」となる
さらに怖いのが報告です
怒られると分かっている人は悪い知らせを持ってこなくなります
ミスを隠す
まずいことを後回しにする
「実は……」と言うのが遅くなる
悪気があるわけではありません
言った瞬間に怒鳴られると分かっているからです
信頼を失う と言うと少し抽象的に聞こえます
もっと具体的に言うと
あなたが早く知る権利を失っている
小さな問題のうちに入ってくるはずだった情報が入ってこなくなる
僕も早く分からせたくて怒鳴っていました
今思えばあれは指導というにはほど遠い
ただ手っ取り早い方法を選んでいただけです
2.評価するより感謝を伝える
では怒らないで褒めればいいのでしょうか
たとえば
「よくできました」「えらいね」「その調子」
これらは優しい言葉に聞こえます
でもよく考えるとこれらはすべて上の人が下の人を評価している言葉でもあります
「あなたはよくできた」と判定する側に自分が立っている
アドラー心理学ではこうした関係を「縦の関係」と考えます
叱ることと褒めることは正反対に見えて実は同じ土俵にある
どちらも「自分が相手を評価する」という立場から出ているからです
ではどうするのか
評価する代わりに感謝を伝えるようにしています
「よくできたね」ではなく「ありがとう 助かったよ」
似ていますが立ち位置が違います
「よくできたね」はこちらが評価する言葉
「助かったよ」はこちらが受け取ったことを伝える言葉です
相手を上から見る必要がありません
同じ高さに立つ「横の関係」です
「褒めない」ということではなく
評価する言葉を減らして感謝する言葉を増やす
ということです
人ではなく行動に言葉を向ける
もうひとつ大事なのは「君は優秀だね」ではなく
「あの段取り 助かったよ」と言うことです
人そのものを評価するとその評価を守らなければいけなくなります
「優秀だ」と言われた人は優秀じゃない自分を見せにくくなる
だから困った時に相談できなくなることがあります
でも「あの段取り 助かった」ならばその人自身を値踏みしていません
具体的な行動を受け取ったことを伝えているだけです
結果が出た時だけでなく途中の頑張りにも声をかける
それだけでも相手は気持ちが楽になります
3.相手の課題まで背負わない
ここが僕自身はいちばん楽になった考え方です
何度言っても直らない人っていますよね
同じミスを繰り返す
教えたのにやらない
そういう時だんだん腹が立ってきます
僕もずっと「なんとか変えてあげなきゃ」と思っていました
でも考えてみてください
その人が変わるかどうかは誰が決めるのでしょうか
アドラー心理学には「課題の分離」という考え方があります
たとえば部下が成長するかどうか
どんな技術を身につけるかどうか
この先どういう仕事をするか
最終的に引き受けるのはその本人です
もちろん上司には責任があります
分かるように伝える
やり方を示す
必要なら練習する
相談しやすい環境を作る
ここまではあなたの課題です
でもその先まで「絶対に成長させなければいけない」と抱え込むと苦しくなります
人が怒るのは変えられないものまで変えようとするから
自分の思った通りにならなかったからです
自分の力で変えられないものを無理やり変えようとするなんて
これほど烏滸がましいことはないんですよ
「何度言っても直らない!」と腹が立った時は
「自分はいま相手の課題まで背負おうとしていないか?」
と一度考えてみる
馬を水辺まで連れて行くことはできます
でも水を飲むかどうかは馬が決めることです
あなたの仕事は伝えること
教えること
必要な環境を作ること
その先でどう行動するかは相手が決めることです
もちろん「放っておけばいい」という話ではありません
伝えるべきことはちゃんと伝える
必要なら注意もする
ただし
伝えた後の相手の選択まで自分の責任にしない
この線引きは必要です
僕は長いこと教えても動かないのは自分の責任だと思い込んでいました
抱え込むから苦しくなるし苦しくなるからまた怒る
だから課題を分けることは相手のためだけではありません
自分自身を守るためでもあるんです
4.「あなたは」ではなく「僕は」で話す
ここまでの話を実際の会話に落とし込んだものが「アイメッセージ」です
アイは英語の「I」
つまり自分を主語にして話す方法です
反対に相手を主語にするのが「ユーメッセージ」です
同じ場面で比べてみます
「なんでいつも報告が遅いの?」
これがユーメッセージです
相手を主語にして「あなたは報告が遅い人だ」と評価しています
言われた側は言い訳するか黙って耐えるかになりやすい
そこでこう変えます
「報告が遅れると僕が判断できなくて困るんだ」
言っていることはほとんど同じですが受け取り方はまるで違います
こちらは相手を裁いていません
「僕は困っている」という自分の事実を伝えているだけです
だから相手も身構えなくていい
「なんでいつも遅いの?」ではなく
「遅れると僕が困る」と言える
この小さな違いが会話を変えます
怒鳴りそうになった時には
難しい言葉を全部覚える必要はありません
僕自身も普段の会話で
「目的論が…」「課題の分離が…」なんて考えていませんから
覚えておくなら
困っている 助かる 嬉しい
この三つで充分です
「なんでできないの?」と言いそうになったら
「ここができていないと僕は困る」に変える
「よくできたね」と言いそうになったら
「ありがとう 助かったよ」に変える
相手を評価する言葉をひとつ減らして
自分の気持ちや事実をひとつ伝える
まずはそれだけでもいいと思います
怒鳴らないようにすると何が変わるのか
怒らなくなったら人が動かなくなるんじゃないか?
そう思われる方もおみえでしょう
僕も最初はそう思っていました
実際には怒りたくなった瞬間に止まれるようになるはずです
いま自分は手っ取り早い方法を使おうとしている
と気づけるからです
少しずつ相手の反応も変わっていきます
いちばん大きいのは自分自身が楽になることです
相手を変えようとしなくなる
全部を自分の責任にしなくなる
背負っていたものを下ろせる
もうひとつ大きな変化は
相談が来るようになることです
怒る人のところには悪い知らせが来なくなります
怒りを使わない人のところには
「実はちょっと困っていて……」という話が早い段階できます
小さい問題のうちに分かれば大きな問題になる前に対処できますから
経営や仕事の話としてこれより大事なことはないでしょう
連鎖は悪い方にも良い方にも続く
あなたが怒鳴らない人になると
あなたの下で育った人も怒鳴らない人になっていきます
僕は今でも思うんです
あの時これを知っていたら
あの子に同じことをしなかったら
あの子は辞めずに済んだのかもしれない
もちろん本当のところは分かりませんし
僕が勝手にそう思っているだけかもしれません
怒鳴られて育った
だから怒鳴るのが当然
厳しく教えられた
だから厳しくするのが当然
それが指導だと思っていたから
「自分がされて嫌だったことをなぜ人にもしているんだろう」
今の僕は怒鳴らない人でいられていると思っています
もちろん腹が立つことはあります
言わなければいけないこともあります
失敗を注意することもあります
怒りを使わなくても伝えられる
相手を支配しなくても厳しいことは言える
それを実践できています
あなたのところで連鎖を止める
もしあなたが昔 怒鳴られて育ったのなら
誰かに同じことをしてしまっているかもしれません
それはあなたが悪い人だからではありません
自分が教わったやり方をそのまま実践しているだけ
だったらここで止めてしまいましょう
それだけでも意味があります
まとめ
今日の話をまとめます
1.怒りを「勝手に出てくるもの」で終わらせない
怒鳴ればその場では人は動きます
それで手に入るのは納得ではなく服従です
その先には指示待ちや報告が来ない環境が待っています
2.評価するより感謝を伝える
「よくできたね」ではなく「ありがとう 助かったよ」
評価ではなく感謝を伝える
人そのものではなく具体的な行動に言葉を向けること
3.相手の課題まで背負わない
あなたがやれるのは
伝えること
教えること
相談できる環境を作ること
その先は別の話であり
課題の線を引けば怒りは小さくなります
4.「あなたは」ではなく「僕は」で話す
「なんでいつも報告が遅いの?」ではなく
「報告が遅れると僕が判断できなくて困るんだ」
相手を裁かず自分の事実を伝えること
厳しくするなという話ではありません
言わなければいけないことは言うべきです
怒りという道具を使わなくても伝えたいことは伝えられます
そしてもしあなたが昔 怒鳴られて育ったのなら
「自分がされて嫌だったことを誰かにしていないだろうか」
と振り返る機会にしてみてください
これに気づいた時点で間違いなくあなたは変化しています
この記事で触れたアドラー心理学
この記事では、実践テーマに合わせてアドラー心理学の考え方を紹介しました
目的論
感情を「何が原因か」だけでなく、「何のために使っているか」という視点から見る縦の関係/横の関係
相手を評価する上下関係ではなく対等な関係を築く勇気づけ
評価するのではなく感謝や具体的な行動への言葉を伝える課題の分離
自分の課題と相手の課題を分け相手の人生まで背負わないアイメッセージ
相手を評価するのではなく自分の感じていることや困っていることを伝える
※アドラー心理学の用語や説明については、学派・書籍によって表現や解釈に違いがあります。ここでは、この記事の実践テーマに合わせて紹介しています。
動画版もあります
同じ内容をうちの犬「ゆきち」と僕の掛け合いで解説しています
文章より耳から入れたい方はこちらへ
もう少し体系的に学びたい方へ
今回の記事では怒りを使わずに人に伝えるための考え方を紹介しました
ただし実際の現場では
「こういう部下にはどう言えばいい?」
「何度言っても直らない時は?」
「注意すると不機嫌になる人には?」
というように具体的な場面で迷うことがあります
そうしたところまで
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